沈黙が、私を支える。


by aoinote101

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記憶

30年も生きてきて
どこかで落としてきた?
いや、生まれた時から抜け落ちていた僕の肋骨
抱きしめるたび
この娘ではなかったと肩を落として…

では、すれ違っただけの誰か?
遠くで僕を見つめていたあの娘?

僕は見落としたのか
僕だけのイブとの出会いを

禁断の木の実の味を知るたった一人の僕の恋人
遠い前世から繋がるはずの僕のカタワレ

君が他の誰かに抱かれるたびに
君自身の命が磨り減っていくのがわかる
そうやって
君も僕を探している
「この人ではなかった」と泣きながら

あとどのくらい迷えば会える?

やがて君は動かなくなる
じっとこのまま待っていようと…

地球の反対側で僕が途方にくれるとき
君は君自身を失っていく…
これが神様の与えた試練ならば
たぶん僕らは永遠に会えない
神様が与えたのは
「探しあてること」ではなくて
「探し続けること」だから

それでも諦めきれず僕達は死んでいく
生まれ変わったら出遭えると信じて
生まれ変わっても消されることのないたった一つの記憶のために



「私の青いノォト」より
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by aoinote101 | 2005-01-07 00:10 | 詩・雑感

かたわれさがし

  「うんっと…どうよ?
  人生に恋愛って?なくても生きられるけど、
  あった方が幸せじゃないのかな?
  たとえ、泣いちゃうような恋でも。
  いや、むしろ泣ける方がいいよ。悪くないよ。

  たとえば
  他の誰かでもいいHなんてしないほうがいいよ。
  それなら一生しないほうがいいよ。
  寂しがって死んでいくほうがかっこよくない?

  誰かを恋しがって死んでいくのは
  人間の本質って気がするんだ。
  確かに人生に関わった家族に
  『ありがとう』って言いながら死んでいくのは
  幸福だけど、
  心の底の方で、誰かを探し続けたまま死んでいくのが
  本質って気がする。」

毅が酔って私に話し始めた。
「じゃあ、あなたを運命の男と信じている私は、
どうやって死んで行けばいいんだよ!」
突っ込みたかったが、笑えないので飲み込んだ。
この男はどんな女を捜し続けているんだろう?
彼の目の前にいる私は、一体何者なのだろう?

その夜酔った毅は、私を抱いた。
少なくとも私には「他の誰かでもいいH」ではなかった。
たぶん私はこれで寂しがって死んでいくことはない。
ただ、毅には二度と会わない。
神様が彼に目隠ししているのが良くわかる。
どんなに近くにいても彼に私は見えないのだ。
一生かけて探し当てる相手は、
私が相手にとってのそれではないことがある。

私が死ぬ時、「巡り会えなかった」と、
泣きながら死ぬのではない。
「巡り会えたことがある」と思い起こしながら泣くのである。
毅の言う悪くない人生なのかもしれない。
でもやはり、
人間の本質を備えた私は、君を恋しがって死んでいきたい。



「私の青いノォト」より
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by aoinote101 | 2005-01-07 00:09 | 詩・雑感

ゆきどけ

「雪だよ。雪が降ってる。」
妹の紗江は飛び跳ねながら窓際にかけていく。紗江は父の後妻、ミドリさんの子だ。私と腹違いの4歳の妹。
「寒いと思っていたけど、降るなんて…。やはり南の島でお正月を迎えればよかったわね。」
と、ミドリさんは憂鬱そうに言った。こうして並ぶと7歳しか違わない私とミドリさん。私達の方が姉妹に見えるだろう。
「でも、紗江はご機嫌よ。この分じゃ明日の大晦日は、雪だるま作りに、雪合戦までしたいって言いだすわね。」
私は、からかうようにミドリさんに言った。
「え~っ?千賀さん!雪遊びに付き合ってあげて!お願い!私には無理~!寒いの苦手!」
ミドリさんは私に手を合わせ、拝むように言った。もちろんそのつもりだ。私にも紗江はかわいい。紗江と遊ぶためにこうして年末に実家に帰っているようなものだから。

大晦日の朝、たっぷりと雪が積もった。私と紗江は万全の装備のもと、雪だるま作りと雪合戦をした。4歳の紗江にムキになって対抗して息が切れた。
「お茶が入ったから、休憩すれば?」
ミドリさんに声をかけられ、部屋に入った。手袋を取ると、私の左手の小指にある筈の物が無い。手袋の中には…?無い…慌てた。
「どうしたの?」
ミドリさんが心配そうに近寄ってきて、はっとした顔をした。
「落としたの?」
頷きながら、私は自分の顔が血の気を失っていくのを感じた。庭に駆け出し遊んでいたあたりをくまなく探した。
(途中で一度手袋をはずしたっけ?どこ?どのあたりだっけ?)
雪は浅いが、枯れ芝まで埋まりはしないと思いながらも…私ったら混乱している。
「あった!」
叫んだのはミドリさんだった。いつの間にかミドリさんも探していてくれていた…?ルームシューズのまま雪まみれになって…。
ミドリさんは寒さで真っ赤になった手で私の手をとった。そして私に銀の指輪を握らせた。
「よかった…。」
涙がこぼれた。指輪が見つかったことが嬉しかったのと、この指輪の大切さを知っている人が身近にいたことに驚き、なんだか泣けた。ミドリさんは鼻水をすすりながら、なにも言わず微笑んでくれた。
ミドリさんどころか、誰にも話したことの無いこの指輪の意味。
紗江にせがまれても、雪遊びを嫌がるくらい寒がりのミドリさんが、こんなに必死で探してくれた。

元旦、家族4人で例年どおりのお正月を迎えたが、父と紗江だけが初詣に行くことになり、私と風邪気味のミドリさんは残ることにした。
我が家に届いた年賀状を整理しながら、私が毎年待ち望んでいるものを見つけ、ミドリさんに見せた。
彼からの年賀状だ。今は転勤で神戸にいるらしい。にこやかに写った彼を見てミドリさんは気付いたようだ。彼の左手の小指に私と同じ指輪が光る。
「この人、8年前に別れたのに、昔ペアで買った指輪のサイズを変えて今も小指にしてるの。私がこの事に気付いたのは5年前の年賀状から。私って鈍感でしょう?」
「じゃあ、千賀さんが小指に指輪を付け始めた、あの5年前ね。」
ミドリさんは指摘した。その頃、ミドリさんは後妻としてこの家に入っていたから…。
「バレバレ!」
私は恥ずかしくて笑ってごまかした。心の奥に隠している弱い部分が、ミドリさんの前で溶け出したような気がした。
「今年は神戸にでも旅行しない?たいていの雪はいつか溶けるものよ。8年も経てば春になってもよさそうなものね…。気の長い話!」
いつものミドリさんらしく、ちょっと意地悪にいってみせた。

庭の雪は新年の陽光に照らされて、濡れながら輝いていた。
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by aoinote101 | 2005-01-07 00:04 | 小説

抽象的な言い回し

 私は昔から抽象的な言い回しが好きだ。「悲しい」とハッキリ表現するより、なにか違った言い回しの方がシックリきたりするものではないかと思う。

 また、自分の感情のコントロールが得意ではない分、大きな心の揺れに自分でもナーバスに反応する。喜怒哀楽、恋、嫉妬…。大きく揺れる自分の感情にパニックになり、その原因をシャットダウンしたりする。強制終了どころかコンセントを抜くタイプだ。
 しかもそんな乱暴なことをしておいて涼しい顔をしているらしい。

そんなこともあってか、私と深く付き合ったことのある人の中には、私を「読めない。」と思っている人も多い。当たり前だ!私にも読めないのだから…。

でも、本当はわかりやすいはずなのだ。心のキャパがとても小さく、誰かに関心を持ってもらいたいが為に、抽象的なわかりにくい表現をする。

そんな私を見抜いてしまう人の前では、私は大人しく、口数も少ない。
逆にわかってくれない人の前では、技巧派と化して振り回すのだ。振り回しておいて、こちらの感情が揺れ出すと…コンセントを抜く。

自分としては関わりたくないタイプの女だ。
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by aoinote101 | 2005-01-06 23:57 | 日常